”三条市民日中友好の翼”に参加
ー中国の現状を見るー
「三条市民日中友好の翼」(10月15日~19日)に初めて参加した。
三条市の民間団体・三条市国際交流協会が主催するツアーであり今回30回目となる。
高波久雄団長(パール金属会長)以下、78名の参加となった。
「三条市民日中友好の翼」について少し経緯を説明したい。
三条市と中国湖北省の鄂州(がくしゅう)市(し)は、平成6年友好都市として締結している。
締結後、両市は、密接な関係を築いてきた。90年代には600人を超える
鄂州市の若者が三条市内の企業で研修生として技術を学び、鄂州市の経済と
社会の発展に寄与してきた。又、三条市からは友好の翼を通じて1500人以上
が鄂州市を訪れ、交流が行われてきた。更に災害時(洪水、地震等)には
相互に支援・協力を続けてきた。
両市は今年4月に友好都市締結30周年を迎えた。
それに伴い8月には三条市の滝沢市長率いる訪問団が鄂州市を公式訪問した。
今回のツアーは、30年を迎える節目の友好の翼となった。
友好の翼での鄂州市訪問は、平成23年以来13年ぶりとなる。
鄂州市は、人口107万人、湖北省の東南部に位置し、省都の武漢に隣接している。
2000年以上の歴史を持つ古都であり、豊かな自然景観と文化遺産で知られている。
歴史的には、三国時代の呉の国の都があり、当時の歴史がうかがえる旧跡が数多く残っている。
経済面では、長江(揚子江)沿岸の港湾都市でもあり、物流業や鉄鋼業が盛んな地域である。
2022年7月には、中国国内初の貨物専用空港である鄂州花湖空港が開港し中国最大の
物流拠点(ハブ空港)として急速に発展している。
友好団一行は、鄂州市の視察として老年大学、都市展示館、産業展示センター、
武昌学校、鄂州博物館などを巡った。
老年大学は定年退職をした市民が太極拳や書道、楽器、切り紙などが無料学べる施設である。
書道教室の見学では髙波久雄団長ら有志が筆を取り、書道を実際に披露する一幕もあった。
又、鄂州市による歓迎パーティーと翌日には、三条市国際交流協会主催による
返礼パーティーが盛大に開催されかつて三条市に派遣された研修生のOBも多数参加し
旧交を確かめた。旅程は、主目的である鄂州市の訪問以外にも大都市上海市内観光も組まれ
一同大満足の友好の旅となった。しかしながら上海の中心部にあるデパートの
カフェの一杯日本円で800円相当のホットコーヒーの値段の高さにはビックリしてしまった。
ところで13年前に鄂州市を訪れたメンバーの一人は、都市外観の余りの
変化に度肝を抜かれたと話していた。
上海市より空路約1時間15分程度に位置する鄂州市は、長江(揚子江)の
南側に位置し中央に湖を有する。車窓からは、高層の住宅用のビル群が幾重にも連なる。
一見すると生活感が感じられない。空き家が多いと聞く。中国の住宅バブルは、
とみにニュースに取り上げられてきた。既に中国は2019年までは、
実質GDP成長率(6%~7%後半)を遂げてきた。しかし、2020年のコロナ禍後、
3年間行動制限を伴った「ゼロコロナ」政策の影響をもろに受け政府目標の5%以上
確保も厳しい状態が続いている。典型的な不動産不況であり、価格統制を撤廃した
影響からの安値競争状態である。不動産は原価割れが続き8割が空き室の状況である
とも云われている。聞くところによると武漢の集合住宅の価格は、1平米40万から
最近では、30%以上の下落が続いているとの事である。中国国内は、不動産価格の
下落と共に工業品卸売物価指数も下落が続いている。これは、デフレに陥り、
不況であることを示している。
一方、特記すべきこととして豚肉や野菜などの食料品の価格は上昇している。
問題は、今後である。工業品卸売物価指数の下落による不況下で手取り収入の減や
失業が拡大され、生活必需品の食料品価格の上昇が続けば国民の生活を著しく
脅かすことになる。これらに起因する中国社会の動乱の危険性もはらんでいる訳である。
三条市と鄂州(がくしゅう)市(し)、個々の都市間単位では、相互に輝かしい
友好の絆を温め合い発展している。誠に素晴らしいことである。
一方国家間では、日本の巨大な隣国、中国との関係性は、微妙な外交関係を
含めて今後とも複雑に変容していくのではないだろうか。
私自身30年ぶり(当時は、深圳の工場団地を視察)の中国訪問となった。
一世代の期間を経て、世界的な著しいテクノロジーの進歩と相まって
これ程大きな時代のスピード感に直面したことはない。
私自身にとって今回の「三条市民日中友好の翼」参加は、
それほどに大きな意義を感じた。