寺子屋”ZEN”は新潟県三条市の工具メーカーに勤務40年の丸山善三がお届けするWebメディアです。

お酒のお話

日本人と、そして新潟と酒

3月に入る。毎年3月1日は、奈良東大寺の修二会(しゅにえ)が、開催される。
「東大寺のお水取り」として親しまれている。この行事は、井戸からくみ上げた
「お香水(こうずい)」を観音様に供えて厄除けを願う目的がある。
この行事は14日まで行われる。

 さて、私は先日新潟にある酒造会社が主催するコンサートに行ってきた。酒造会社に併設
されているエントランスホールでの100名前後のアットホームなコンサートであった。
一般のコンサートホールとは、異なる心地よい時間を過ごした。コンサートは毎月
第2土曜日に開催される。また、平日は酒蔵の見学もできる。

ところで日本酒は日本で伝統的に製造されている酒であるが、その国内消費量は1973年を
ピークに減少を続けている。そのような中、近年では海外に向けた広報活動が積極的に行われ
輸出金額はこの10年間で約3倍になっている。しかしながら、国内生産に対する輸出割合は依然
として小さく、出荷のほとんどが国内需要向けである。国内での酒離れが止まらない。
日本酒を好む筆者としては寂しい限りだ。生産から見ると、日本全国の酒蔵(日本酒・
本格焼酎・泡盛、本みりん)は2024年1月時点で、約1,600軒と推定されている。
1992年には、約2,400軒あったので約30年間で800軒は減っている。酒蔵数の一番は、新潟県で
89軒である。以下長野県の74軒、兵庫県の69軒と続く。一方、国内での日本酒需要の低迷に
歯止めをかける活動が、酒どころ新潟でも行われ日本酒の魅力発信に躍起になっている。

その1つである日本酒のイベント「にいがた酒の陣」は今年も、新潟市内で3月8日(土)
から3月9日(日)まで開催される。ここでは、500種類を超える新潟のお酒が試飲できる。
新潟のお酒は、端麗辛口のキレのある飲み口とスッキリとした味わいが魅力であると言われている。
昨年は、16,000人の入場者数があり、今年は、18,000人を見込んでいる。
「にいがた酒の陣」は、新潟県酒造組合50周年を記念して地元酒蔵が生んだ多彩な新潟清酒を
味わい、新潟清酒のファンになってもらうために2004年に第1回が開催された。
モデルとなったのが、ドイツのミュンヘンでの伝統的なビールの祭典「オクトーバーフェスト」である。

もう1つは、2014年に長岡市が制定した、「長岡市日本酒で乾杯を推進する条例」である。
その条例は、市内にある蔵元が造る「長岡の酒」による乾杯の習慣を広め、全国・世界へ
長岡の酒の普及促進と、歴史ある長岡の日本酒文化を後世に伝えていくという機運を市民と
ともに高めていくためを制定されたものである。丁度昨年(2024年)は、制定10周年にあたり
6月に市内で記念イベントが開かれた。市内の酒蔵から提供されたお酒が参加者に乾杯の音頭
と共に一斉に振舞われ大いに盛り上がった。

 さて、古くから日本人と酒の関係は、生活に密着したものであった。お酒は、神事や宴会など
さまざまな場面で楽しまれてきた。また、お酒は神聖なもので、神と人とを結びつける役割を
担っていた。その始まりは、弥生時代に大陸から稲作が伝来し、こめ麹を使い、お酒が造り始め
られたと言われる。さらに奈良時代には麹を使っての酒造りが確立され、徐々に普及していった。
そして江戸期に入ると流通網の拡大とともにお酒が嗜好品として、日常的に武士や町人にも
親しまれるようになった。ビールやワインなどの洋酒は明治以降、西洋文化が取り入れられ普及
したものである。四季の花鳥風月を愛でながらお酒を楽しむのは、日本の優雅な風習である。
日本酒の銘柄数は、約1万以上あると言われている。日本酒は、大きく「純米酒」「吟醸酒」
「本醸造酒」「普通酒」の4種類に分けられる。さらに、特定名称酒として「純米酒」「吟醸酒」
「本醸造酒」があり、原料や精米歩合、製造方法などでさらに分類される。日本酒の酒蔵数は
減っているが、食の好みの多様化等によりお酒の消費量そのものが減ってもこれだけ多くの銘柄が
現存するのは、いまだに日本酒の愛好家が多いことに他ならない。

人生100年時代、果たしてどれ位の種類の酒を堪能できるであろうか…。
人間が一生アルコールを飲む量は、当然限られている。日本酒愛好家にとっては
うかうか洋酒など飲んでいられないかもしれない。

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