高崎市の途中下車からの発見
先週、所用で高崎市に立ち寄った。高崎市は人口約37万の群馬県最大の商業都市である。
(県庁所在地の前橋市は人口約33万)因みに新潟市の人口は、約77万である。(令和5年6月末)
上越新幹線燕三条駅から高崎駅まで1時間で行ける通勤圏内である。
東京駅まで上越新幹線で約2時間とすると高崎駅は丁度中間地点となる。
新幹線では東京へ行くことがほとんどで、高崎市はめったにない。
タイトルを高崎市には甚だ失礼であるが、“途中下車”としてしまった。しかしながら今回は
しっかりとした目的があって高崎市に出向いた。
新幹線のシートは、通勤電車の横シートと違い進行方向向きのクロスシートとなっている。
それもリクライニングシートで快適だ。乗車後、窓からの景色を眺めたり、
スマホをいじったり、雑誌をパラパラとしているうちに、少しうたた寝でも・・・。
と思った頃に高崎駅到着のアナウンスで「アッ」という間に1時間が過ぎてしまう。
今回は、土日の予定で駅から徒歩数分のホテルで1泊した。
土日2日間で要件を済ませ2日目、日曜の午後2時頃すべての予定が終わり、
かなり早いが、これから帰路につこうと高崎駅方面に向かって歩いて行くと、
偶然に高崎駅西口近くの「高崎市美術館」の真ん前に辿り着いた。
ビルの一角にある瀟洒な入口の街中の美術館と云うところか・・・。
その日は、「自然界の報道写真家」として写真界では、つとに著名な
宮崎 学氏の『イマドキの野生動物』と題しての企画が行われていた。
私は真夜中の定点撮影に収まっている、ツキノワグマが写真スタンドを構えている
企画ポスターに興味をそそられ、入館することにした。
会場内展示写真には、撮影に際し赤外線センサーなどとカメラを組み合わせた自作の無人撮影装置を使い
一般的に撮影困難な野生動物の生態をも数多く写真に収めている作品に目が釘付けとなった。
私は特に自然界での動物の死をとらえた、死体が生命体から一個の“物”と化して土に還ってゆく
変化を描写した作品が印象に残った。宮崎学氏は、現在猛禽類などの生態写真に関しては、
1980年代から日本の第一人者とされている。
ここで約1時間少し満足の内に観覧を済ませた処で学芸員の方から
駅の反対側の東口の前に併設されている「高崎市タワー美術館」を紹介され向かうことに。
ここでは、『大江戸の賑わい』の主題で幕末明治の浮世絵百年の企画展が行われていた。
嬉しいことに65歳を超える私は、免許証を提示して無料となった。
得した気分の中、館内へ。
そこには浮世絵の色彩が間接照明の淡い光線の中で輪郭を浮き上がらせている。艶やかの一言に尽きる。
色彩的にも江戸時代に盛行した浮世絵は、絵師、職人たちの卓越した技術で流布して最も人気を博したと言われる。
美人画、役者絵、力士絵、幽霊画、そして風刺絵と当時の娯楽や文化、流行を色濃く反映し歴史的な視覚資料である。
私は美術館を後にした。そして時計に目をやりながら、
強い印象の作品を続けて鑑賞しからだろうか、少しクラクラした。
「もう一度一人で出かけよう・・・」
私は後ろ髪を引かれる思いを残しながら小走りで高崎駅に向かった。
雨脚も落ちつき、あたりはすっかり暗くなっていた。
※記事内の画像は高崎市タワー美術館様に許可を得て掲載しています。