寺子屋”ZEN”は新潟県三条市の工具メーカーに勤務40年の丸山善三がお届けするWebメディアです。

北越雪譜

昨年師走を迎えたころ、当地新潟も一面の雪景色。

かつて昔のように、子供達が屋外で「キャ、キャ…」と雪と戯れる光景も稀になり寂しい思いもしている。江戸時代の雪と人との交わりを見事に表した書籍が現在も読み継がれている。『北越雪譜』(ほくえつせっぷ)である。

『北越雪譜』は、江戸後期における越後魚沼の雪国の生活を活写した書籍。初編3巻、2編4巻の計2編7巻。著者は現在の新潟県南魚沼市塩沢で縮仲買商・質屋を営んでいた、鈴木牧之である。そこには、雪国の風俗・暮らし・方言・産業・奇譚まで雪国の諸相が、豊富な挿絵も交えて多角的かつ詳細に記されており、雪国百科事典ともいうべき資料的価値を持つ。著者鈴木牧之は、我が国有数の豪雪地帯、北越塩沢の生活を主体とし、特に雪を焦点としてそれに付帯した風俗習慣を伝えようと出版を試みた。1837年(天保8年)に江戸で出版されると当時のベストセラーとなった。発売に関し当時の人気作家、馬琴、京伝等が関係し,天下の奇書として圧倒的な人気を博したという。しかも今日これを見れば単に風土記的な興趣のみならず、科学的随筆の価値もある。また方言研究の重要資料でもある。そこには、越後の産業や生活についても記されており、経済史および民俗学の研究にとって貴重な資料となっている。挿絵が多く入れてあり、本文の理解を助けてくれる。

昨年来の本来降雪の無い区域においても降雪による障害が報道されている。

『北越雪譜』は復刻版が発行され、電子書籍で購読できる。深々と雪の降る寒い夜は、少し部屋を暗くして天下の奇書を炬燵に入りくくってみるのも悪くない。

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