ツーベルト世代
現実の選択
12月も半ばを過ぎるといよいよ年の瀬の準備が気になりはじめる。「一年は早いな」毎年この時期になると思うことである。今回の内容は、新しいトレンドに関する内容である。「ツールベルト世代」ご存じだろうか。現在アメリカをはじめとする各地で大学に進学しないでブルーカラーの仕事を選択する若者が、いわゆるZ世代間で一つのトレンドとして広がりつつありようだ。彼らは、”工具を収めたベルト”に象徴されるように「ツールベルト世代(Toolbelt Generation)」とも称される。この兆候は、私たちに従来の学歴・進路観に対して新たな問いかけを促しているようでもある。
さらに詳しく説明してみよう。今や世界的な技術人材不足時代に入っている。つまり技能は、市場化の段階にはいり、個人がスキルで稼ぐ時代が始まっているともいえよう。若者間では、実感を得られる仕事として、技術職の選択が合理的であるという価値観が広がっている。アメリカでは、ブルーカラー向けのオンライン・マーケットによる「技能の流通市場」が急成長している。特に20代のZ世代では、「安定×専門性」を同時に満たす仕事として技能職が注目されている。
これらの事の背景も説明しよう。事例を上げる。アメリカでは、技能職が若者に選択されるいくつかの要因が関連してスキル重視の労働市場を台頭させている。
- 大学学費の高騰のローン負担増大の時代
- しかしながら市場価値が伴った大きな収入を得たい
- そして景気変動に強い安定的な雇用を求めたい
- さらにスキルを習得し成果が見える手応えも欲しい
- これらが技術人材不足時代下でスキル重視の労働市場を台頭させた
テスラCEOのイーロン・マスク氏は、「大学で学ぶ内容はオンラインで無料で学べる」と述べて、学位よりも実践力を優先する姿勢を示している。アップルのCEOティム・クックは「米国における新規採用者の約半数は大卒ではない」と明かしており、大学教育と現場ニーズとのギャップを指摘している。ツーベルト世代は、単なるブルーカラー志向ではなく、身についた自分の技量で社会とつながって生活する。そして自由で誇り持って暮らしていきたい。彼らは、誇りある働き方を求め続けていくために企業そのもののあり方や教育構造を変革する起点となっていくであろう。