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新嘗祭を知る

恵みに感謝

12月になった。塀越しに“山茶花(さざんか)”の花が薄紅色の可憐な花びらをほころびはじめている。先月の話になるが、11月23日は、“勤労感謝の日”。併せて季節の催しとして、“新嘗祭(にいなめさい)”の日でもある。新嘗祭は、天皇がその年の新穀である米を宮中の神殿に供え、感謝の奉告を行う催しである。そして、これらの供え物を神からの賜りものとして天皇自ら食する、古代から続く宮中での最も重要な儀式である。このように新嘗祭は、古くから収穫に感謝する日本人の慣習の中で重要な行事といえる。この時期は、全国各地の神社や寺院で感謝の行事が行われる。新嘗祭は、弥生時代の稲作儀礼に起源があり平安時代に国の祭祀として確立したものです。しかしながら終戦後、アメリカのGHQ(連合軍最高司令官総司令部)によって天皇と国民の繋がりを絶つために公的行事から除外されたが、昭和28年(1948年)に「勤労感謝の日」として国民の祝日になりました。

  ここで日本の新嘗祭と欧米の感謝祭を比較してみよう。いずれも自然のめぐみに感謝し共同体の繁栄を祈り収穫物を神や自然に捧げる農耕文化に根ざした祭礼である。新嘗祭は、日本古来の神道に基づく祭礼であり、五穀豊穣と国家安寧を祈願ものである。五穀とは、米(こめ)、麦(むぎ)、粟(あわ)、稗(ひえ)、豆(まめ)を指し、古代から日本人の主食として重要視されてきた穀物です。

 一方、アメリカの「Thanksgiving Day(感謝祭)」は、1621年にイギリスからの移民が、先住民の助けを得て初めての収穫を祝ったことに由来します。神への感謝とともに、異文化間の協力を象徴する行事として発展し、現在では11月の第4木曜日に家族で七面鳥やパンプキンパイなどの料理を囲み、感謝の気持ちを共有する祝日となっています。 ヨーロッパの収穫祭は、キリスト教の影響を受けつつも、古代ケルトやゲルマンの農耕儀礼に起源を持つものも多く、秋の収穫期に教会で礼拝を行い、農作物を飾って感謝を捧げる形式が一般的です。新嘗祭は国家的・宗教的儀式として天皇が中心となるのに対し、アメリカやヨーロッパの収穫祭は市民や教会、地域コミュニティが主体となる家庭的・地域的な行事です。 また、新嘗祭は神道の儀礼に則った厳粛な祭祀であるのに対し、欧米の収穫祭は祝宴や娯楽を伴うことで、共同体の絆を深める側面が強く、宗教的要素と世俗的な楽しみが共存しています。とはいえ、どちらの祭りも「自然の恵みへの感謝」「共同体の絆の再確認」「次なる季節への祈り」という根本的な精神を共有しており、人間が自然と共に生きる姿勢を象徴する行事と言える。 それぞれの文化が異なる形でこの精神を表現していることは、むしろ人類共通の価値観の多様な現れとして、尊重すべきものである。

  かつては、大都会の繁華街では、毎年ハロウィンのお祭り騒ぎで物議を醸し出したこともあった。私達、日本人もこの機会に厳粛に新嘗祭を送りたいものである。

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